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【レビュー】7月のニット帽 著者:虫とり小僧

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感想

人間をちょっとだけ信じたくなる・・・そんな物語だった。

 

 

 

昨日だったか今日だったか、フォロワーのナディアさんのつぶやきがまだ印象深く頭に残っている。子連れママに対する世間の冷たい反応だ。

俺も自分の子供が生まれるまでは新幹線でけたたましく泣く赤ちゃんの声が聞こえると舌打ちしたい気持ちになったものだ。

デッキにでも連れて行って他の乗客の迷惑にならないようにしろよ!

そんな気分でうるさい赤ちゃんを鬱陶しく思っていた。

 

ところが、いざ自分が人の親になると、こんなにも理不尽で思い通りにならない愛すべき生き物が存在するのか!と驚かされた。あやそうが、おむつを替えようが、ミルクを飲まそうが爆弾のようにけたたましく泣いている我が子を泣き止ませることができない。家だと途方にくれて泣き疲れるのを待つしかないこともあるくらいだ。

本当にどうにもならない瞬間があるのに、電車の中でそれをやられてしまうと周囲の視線がいたたまれなくなって、地面に落ちた雪みたいに小さく消えてしまい気持ちになったもんだ。

 

 

 

・・・いや、俺はならなかった笑

そういう気持ちだと人に聞いただけ笑

 

 

ただ、そういった子育ての事情がわかってからは俺は電車の中で赤ちゃんが泣くと、話しかけることはしないまでも、できるだけ微笑むようにしている。大丈夫ですよ。赤ちゃん泣いてもそれは仕方ないんですよ。可愛いですねと目でメッセージを飛ばしながら。

 

ナディアさんのつぶやきの話に戻る。

俺は基本的に人間の心を信用していない。自分自身、その人の立ち場になるまで、相手の困った気持ちを上手に想像することができなかったので、それは他の人もそうだろうという立場だ。

犬を連れ込んでOKの飲食店には俺はできるだけいかないけど、愛犬家どうしだとたまらなく嬉しいサービスの店だろう。そして俺のようなやつは煙たく感じるはずだ。

 

煙たくといえば、喫煙者。2歳くらいの子供を連れて居たときは、喫煙者の吐く副流煙が我が子にふりかかると想像したら宇宙の彼方へアンパンチしたくなるくらい喫煙者を憎悪したものだ。彼らは別にたばこを楽しんでいるだけなのに。

 

昔はSNSなんてなくて、価値観が本当に右ならえだったんだと思う。みな一様にメディアの影響をうけて、共通の趣味嗜好、倫理観の中で生活をしていたのだ。それぞれが別々の価値観を自由に持つようになって、それは素晴らしいことなんだけど、互いに壁をつくりあって世界が分断されているような感覚を俺は常に感じている。立場がちょっと違うだけで、全然別の世界の人という感じ。ブロガーとアフィリエイターと投資家。配当金生活者と、起業組、労働者、医者。専業主婦と兼業主婦。Twitter中でも比較的自由に見えながらもお互いの立場からくる壁を感じることがある。

 

しかし虫とり小僧さんの書いた物語は、俺みたいなひねくれものでさえも人間を信じたくなるような温かい話だった。

 

毎日電車に乗る人々は、互いに互いを干渉せず、無関心にそれぞれスマホに目を落としている。

俺にはそんなふうに世界が見えているのに、虫とり小僧さんの目には俺とは違った温かい視界が広がっているのだろう。

読んだ人にはこの俺の感想が、物語の温かさがきっと伝わるし、共有できると思う。

 

小説の構成

 

サブタイトルに「ゴリラ風高校生ラガーマンを中心とした青春群像劇」とあるように、この小説は群像劇のスタイルとなっている。

俺は本を読んでいる量はたいしたことがないんだけど、群像劇で印象深いのは湊かなえの「告白」だ。

湊かなえの場合は一人称視点で複数の登場人物の独白で物語が構成されているが、7月のニット帽は三人称視点に統一され、それぞれの登場人物の胸中はくわしくはわからない。

そこまた面白さの一つでもあるし、今後の展開を期待したくなってしまう。

というのも、別の視点のキャラクターを中心に同じ話を見た時に全く違うアナザーストーリーが展開できるからだ。

特に新聞親父の正体はわかったものの、行動原則はいまひとつすっきりしなかったので、彼を中心とした物語や、OLがどんな胸中で主人公将則を見ていたかなんかが読者としては気になってしまう。

個性的なキャラクターが数多く登場するので、この物語だけで終わらせるのはもったいないように思える。

サブキャラクターが主人公になったり、別の物語に登場する手法なんかは伊坂幸太郎がよくやる手法なんだけど、あ!泥棒で探偵の黒澤がまた登場した!という伊坂ファンならでは楽しみがあったりするので、今後も小説を書かれるようならそんな展開になったら面白そうだなと勝手に期待してしまう。

こういう勝手な期待は書き手からすると結構困ったりする笑

 

群像劇で何が言いたいかというと、物語の展開が難しい。登場人物ひとりを追えばよいわけではなくて、電車中でそれぞれの人物の役割が交錯して、驚きと感動をつくっていかないといけない。登場人物は増えれば増えるほど話としては複雑さが増すので、すごくうまくまとめられた話だなと若干上から目線で感動してしまった。

 

俺も以前4万文字前後の短い小説を書いていたことがあったので、虫とり小僧さんの小説がちゃんとしているなぁとしみじみ読むことができた。起承転結の原則がきちんと小説の長さに応じて書かれていて、転の部分がちょうど物語の半分のところで起きたり、解決に向かって主人公が苦しみそれを乗り越えていく姿も構成としてはセオリーを守って書かれていながら、それでいて独特のエピソードでオリジナリティが出ている。

昔、書いていた身としては上手い!と唸らざるを得ない。

 

表現

 

時折でてくるインテリジェンスをにじませる表現が小説を彩っている。藤原氏ゆかりの寺や、ラガーマンの思考によくこんなものが出てくるなという難しい言葉(忘れた)。

そして圧倒的に気持ち悪い昆虫の知識。

俺も小学生の頃昆虫博士と呼ばれていたけれど、それは頭を含めた身体が3つに別れて羽が4枚、足が6本のオーソドックスな昆虫の類だけだった。虫とり小僧さんの表現する昆虫は気持ち悪いものまで含んでいて、驚くほどその知識が豊富だった。ゲンゴロウの種類とか初めてきいたわ!wって突っ込んでしまった。

ゴリラ風の高校生の普段の行動と内面の恋愛感情のギャップが主人公を愛おしく可愛らしく感じせる見せ方となっており、女性も楽しめる内容となっている。

難しい漢字やこう読んでほしいと思わせる文字には()書きで読みながなふってある配慮や緻密さも内容のゴリラゴリラした感じとギャップがあって楽しい。

 

まとめ

 

この小説を読んで、あ、俺も久しぶりに書きたい!小説書きたーい!!って何かスイッチが入ってしまった。

いま、嫁と離婚するしないの大喧嘩中なので、このまま無事に離婚にすすめばきっと俺に膨大な時間が手に入るのでまた小説をかく時間が手に入るのではないかと興奮している。

 

俺、前はけっこう恋愛小説とか書いてたわけですよ。

そして、恋愛小説書くとね・・・けっこうモテるんですよ☆

 

俺、がんばるわ。

 

もうええわ

 

 

 

 

 

虫とり小僧さん長編の執筆お疲れ様でした。

 

 

これから読まれる方へ。

1話ずつ区切られて26話まであります。

物語の舞台にもなっている通勤電車の中で1話ずつ読んでみてはどうでしょう。

この物語を通勤電車の中で読んでいるあなたも誰かに人間観察されているかもしれなせん。

 

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